PARCO CASA

PARCO CASA 制作Story

「入居者の声を物件づくりに反映できた、画期的なケースです」

入居者に最も近い立場である、仲介会社や管理会社のスタッフが、賃貸物件のプランニングに関わる――初めて経験する仕事の仕方に、試行錯誤しつつも納得のいく結果を出せたと語る、株式会社ハウスメイトパートナーズの谷さん、株式会社ハウスメイトショップの元山さんにお話を伺いました。

谷 尚子さん

株式会社ハウスメイトパートナーズ
東東京支店 支店長 谷 尚子さん

2000年にハウスメイトグループに中途入社。仲介営業、仲介店長を経て、同社女性初の管理の現場担当となり、2011年より現職。人と話しをするのが好きで、大家さんと話し込むといつも止まらない。
今回、賃貸住宅の建物や入居者の管理を行う管理会社としての立場から、パルコカーサのプロジェクトに関わる

仲介・管理の専門家の立場から
入居者目線の物件づくりをアドバイス

ー賃貸住宅を建築する際に、仲介会社や管理会社がプランニングから関わることはまずないと伺いました。御社にとっても初めてのケースだったのでしょうか?

谷さん「私たちの仕事は、完成した物件の仲介や管理です。すでに間取りや設備などが決まっている建物の賃料査定を依頼されたり、仲介や管理を委託されるのが普通で、建物自体の計画から関わることはまずありません。実際、私も20年来この仕事をしていますが、このようなケースは初めてです」

ーそうなんですね! どのような経緯で、パルコカーサのプロジェクトに参加することになったのでしょうか。

谷さん「ミサワホーム様が主宰する賃貸住宅セミナーに関わった実績があり、今回のお話を頂戴しました。仲介や管理の専門家であり、地元の事情もよくわかっているので、ぜひパートナーとして協力して欲しい、と。今までは川下の立場でしたが、川上の建物づくりから関われるということで、めったにない機会だと思いましたね」

元山 和美

株式会社ハウスメイトショップ
北千住店 店長 元山 和美さん

2007年にハウスメイトグループに中途入社。複数店舗にて仲介営業を経験し、2010年から現職。同社でも数少ない女性店長として活躍している。趣味は旅行・ドライブ・美味しいものの食べ歩き。
今回、賃貸住宅の入居者募集を行う仲介会社としての立場から、パルコカーサのプロジェクトに関わる

ーどのような点で、専門家の視点を活かせそうだと感じましたか?

元山さん「仲介業の立場から言えば、家を借りる人たちのライフスタイルや価値観は年々変化しているのに、物件がそれに追いついていない感じがしていました。借り手の、物件を見る目はだいぶ肥えてきています。インターネットの普及が、それを後押ししているのだと思いますが…。日々、部屋探しの現場に立ち合っている私たちだからこそ、ニーズにマッチした建物を提案できるのではと考えました」

谷さん「建てれば借り手がつくというような、昔ながらのやり方はもう通用しない時代です。賃貸市場が厳しくなり空室が増えていく中で、家賃の値下がりを食い止め、継続的に良質な入居者を確保していくには、物件自体が魅力的であることが大切です。入居者のニーズに合った建物であれば、その後の賃貸経営も軌道に乗りやすいのですが、最初の時点で方向性を間違ってしまっているケースもあり、残念に思っていました。そのような事例もふまえて、安心して賃貸経営を行うための方策をアドバイスできるのではと思いました」

入居者に愛され、安定した収益を生む物件
これからのモデルケースとなることを願って

ーそのような経緯で、画期的なプロジェクトがスタートしたわけですね。とはいえ、お互いに初めてのやり方で進めるわけですから、戸惑ったことも多いのでは?

元山さん「業界も立場も異なり、共通認識がないところからのスタートで、言葉を尽くさないと通じない部分もありましたね。そこはFPの山口先生が、仲人役として上手にオペレーションしてくださいました(笑)」

ーオーナー様も交えて、3時間くらいかけてみっちりと話し合うこともあったとか…。

谷さん「オーナー様がこのプロジェクトにゴーサインを出してくださるまでに、かなり密なミーティングを行いましたね。オーナー様ご自身、とても勉強家でしたから。でも、ゴーサイン以降は“プロの皆さんに任せる”と言ってくださり、ミサワホーム様、山口先生と私たちの専門家集団で、具体的な話を詰めていくことになりました」

元山さん「間取りの素案はできていたのですが“借り手はこの部分を見る”とか“こういう設備は付いている方がいい”など、具体的なスペックについて意見を出させていただきました」

ー具体的には、どのようなことを提案し、採用されたのでしょうか?

元山さん「今回の物件のターゲットは、ファミリー層。子育て中の若いご夫婦の場合、日当たりのよさを重視します。ですから、全戸南向きをご提案しました。また、ファミリー層はLDKを希望してネット検索をかけますから、DK表示ではなくLDK表示になるよう面積を調整していただいたり。そのような細かい配慮も入居者募集の際には大切になってくるわけです」

谷さん「細かいといえば、コンセントや収納の位置も、家具の配置をイメージしながら注文を出させていただきました。予算とのせめぎ合いの中、ミサワホーム様にもかなり知恵を絞っていただいたと思います。私自身、今回の経験を通じて“建物の値段って、こうやって決まるんだ!”と認識を新たにしました」

ー実際に物件を拝見しましたが、2階LDKで日当たりがよく、リビングの床が無垢材であることも印象的でした。賃貸住宅で、無垢の床材を採用するのは珍しいですよね?

谷さん「はい! そこは私のこだわった部分です(笑)。2階のLDKには、岡山県西粟倉村産、杉の間伐材からできた無垢床を採用しました。無垢は肌触りがとてもやさしく、温かいんです。入居者のお子さんが、本物の木の温もりに触れながら育ってほしい…そんな想いで、ご提案しました。コストを考えると厳しかったと思うのですが、OKを出してくださったミサワホーム様には感謝しています」

元山さん「ほかにも、室内干し用の金物をつけてほしいとか、あれこれ要望を出しましたよね(笑)。ミサワホーム様には、予算内におさめるために、かなり頑張っていただきました」

ーまさに、プロのアイデアと知恵の結集ですね。これだけ力を入れた物件なら、お客様を案内する際にも力がこもるのでは(笑)?

元山さん「物件の特長を隅々まで熟知していますから、自信をもってご案内できると思います」

谷さん「このような仕事の進め方ができると、現場のモチベーションも上がりますね。結果を出すのはこれからですが、今回の件が成功事例になれば、私たちのような管理・仲介会社が賃貸物件のプランニングから関わることが増えて、第2、第3のパルコカーサプロジェクトが生まれるかも…と期待しています」

入居者の声が物件づくりに反映されれば、満足して住み続ける人が増え、その結果、安定した収益を生んでいくでしょう。このプロジェクトが成功し、モデルケースとなる日は近いかもしれない…と感じました。
(取材・文/川口章子)