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「自分で自分のケツを拭くのが大人」 江戸切子 根本硝子工芸 根本達也さん

様々な業界で活躍する大人に、これまで地道に積み重ねてきたことや乗り越えてきた苦労をインタビューする「大人の散歩道」。現在、活躍する大人はどんな生き方をしてきたのか。今も昔も変わらない大切なことを伺っていきます。  
今回は、根本硝子工芸の二代目 根本達也さん(53歳)のお話。二年前に亡くなった達也さんの父 幸雄さんは、江戸切子の伝統工芸士として厚生労働大臣賞や東京都知事賞など数々の受賞暦を持つ名匠でした。偉大な父の後を継ぎ、ご自身も一流のガラス職人として江戸切子を作り続ける根本達也さんの声をお届けします。

僕らの仕事は、器に彫刻して付加価値を高めるという、要はガラスを削るプロですね。俗に伝統工芸、江戸切子と呼ばれていますが、あまりそういうことは意識していません。

もともとはやりたくてこの仕事を選んだわけではなかった

高校時代はチャラチャラしていてあまり質のいい学生ではなかったんです(笑)。この世界に入ったきっかけは、高校を卒業後、親父の知り合いが作ったガラスの専門学校に入学したこと。親父に「そこ行くか」と聞かれた僕は、「まだもうあと二年遊べる」程度の感覚で入学を決めました。だから、もともとはこの仕事をやりたくて選んだわけではなかったんですよ。

親父の手のひらの上でうまく転がされていた

専門学校では、グラヴィール(*1)という技法を中心に学びました。グラヴィールは、カット工法(*2)と比べて難しいので浸透していないんですが、実は僕は高校時代から親父に基礎練習させられていたんです。「小遣いをやるからやれ」と言われて(笑)。アルバイト感覚ですよ。おかげでグラヴィールの授業になったとき、みんなはできないのに僕はある程度できた。親父の手のひらの上でうまく転がされていたという感じですかね。
卒業して親父の工場で下働きを始めてからも、週一回自主的に先生のところに通いました。とにかく基礎練習を繰り返したんです。そうやってグラヴィールを習得した。現在、商売的にベースにしているのはカットですが、その経験は大きかったです。今となっては親父に感謝なんですけど、当時は「めんどくさい」と思っていたんですよ(笑)。

*1シャフトの反対側から、砂をつけた銅板で器に模様を擦っていくという技法。
*2ダイヤモンドホイールを回転させて、ガラスの表面を削っていく技法

どうしたって親父と比べられてしまう

自分の作品が日本伝統工芸展に入選するようになると、作るのが面白くなってくるんですね。まして自分の作ったものが売れたりすると。それに、段々「根本幸雄の息子」として顔が通ってきますから、おかしなものを作っていたら笑われるぞっていう気持ちもありました。自分ではいい作品が出来たつもりでも、周りは「いや、このくらい幸雄さんの息子さんなら当然」という認識ですし。どうしたって比べられてしまう。だからどんどん一生懸命になるんですよ。「息子さん、良く仕上げてるね」って言葉がほしいもんだから。

手間はかかるけど、それだけの価値がある

親父はすごく厳しかった。その親父が残した作品を見ると、ガラスの表面がとても綺麗なんですよ。今の若い人の仕事は、最後の仕上げに酸磨き(*3)しておしまいというのが一般的です。そのやり方は手間が少ないので効率的なのですが、表面が酸荒れするという欠点があります。手で磨いた方がガラスそのものは綺麗になる。それは僕らにはすぐわかります。親父の作品の表面がとても綺麗なのは、酸磨きの後に手磨きで磨き直しをしていたからなんですね。ものすごくよく擦ってある。それを見たとき、「手間がかかっただろうけどそれだけの価値があるな。俺もこれをやらなければ」と感じました。

*3グラスを酸につけて表面を溶かす磨き方

お客さんを裏切らないことが大切

商売に徹するんだったら、正直今よりもっと儲けられます。なぜなら、僕には「根本幸雄」という親父の名前がありますから。でも、親父はおそらくそれを望んでいない。結局、僕らが作ったものは誰かに購入してもらうわけなので、そのお客さんを裏切らないことが大切なんです。楽して儲けようとするといつかばれる。きっと売れなくなる時がきてしまう。親父や僕がこれまでずっと続けられてきたということはやっぱり、ずるいことをしていないからということなんでしょうね。そういう根性は、修行中の息子にも伝えておかなければいけないと思っています。

若者そのものは昔から変わっていない

僕は、若者の感覚自体はあまり変わっていなくて、変わったのは世の中の方だと思うんです。親や先生、大人が優し過ぎるんじゃないですかね。大人が強くないから子供が暴れるわけですよ。昔はいた怖い大人が減ってきているから、若い人たちが「これでいいんだ」という感覚になっているのかもしれませんね。うちの親父なんて死ぬほど怖かったですもん。
だけど、今の若い人たちはすごく真摯に仕事に取り組んでいますよ。作品を見ればわかる。優秀な若い人がいっぱいいます。彼らは、僕らの常識には無い発想をする。「お前、この道具をこんな使い方しているんだ!」と驚くようなことを平気でやるんです。そこから僕らが学ぶことも少なく無い。そこは本当にすごいと思います。

自分で自分のケツを拭くのが大人

自分が大人になったなと思ったのは、二年前に親父が亡くなった時ですかね。その前から親父はもう工場には出ていなかったんですが、生きているのと本当にいなくなってしまった後では違う。「こりゃいよいよ俺の責任になるぞ」って。これからは自分が本当にこの会社を守っていかなければいけない、自分のケツは自分で拭かなければいけないなと自覚しましたね。

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