開く
閉じる

楽しいお部屋を探したい

「“自分”が無いことが自分のスタイル」 株式会社フランテッセ 代表取締役/フラワーデザイナー 中居美和子さん

様々な業界で活躍中の大人にインタビューする「大人の散歩道」。現在、第一線で仕事する大人はこれまでどんな生き方をしてきたのか。今も昔も変わらない大切なことを伺っていきます。  
今回は、株式会社フランテッセの代表取締役でフラワーデザイナーの中居美和子さんのお話です。デンマークの有名デザイナー ニコライ・バーグマン氏の下でチーフデザイナー・店長を務め、独立。現在は、花にまつわるあらゆる仕事を手がける中居さん。花への想いや、人を惹きつける仕事術などを伺いました。

私は、「フラワーデザイナー」の肩書きで仕事をしています。自分が作りたいものを作る「アーティスト」というよりも、お客様から依頼されたものを表現する「デザイナー」。本質的に私は、“自分”を出していくよりも、人が望むものを提供する方が得意なタイプだと思っています。

自分の生きる場所はここだ、と直感

子供の頃から動物や植物が好きで、もともとは獣医になりたかったんです。だけど、受験に失敗してしまって(笑)。獣医は諦めて、大学では、微生物を研究していました。でも、微生物は小さすぎて、あまり情が湧かず(笑)。そのまま微生物関連の食品メーカーに就職してからも、やっぱり何か違うという感覚をずっと持っていました。それで、働きながら、花の専門学校に通うことにしたんです。子供の頃から、動物と同じように花も好きでしたから。
入学してすぐに、「自分の生きる場所はここだ」と直感しましたね。それがどうしてなのか当時はわからなかったんですけど、今考えると、花の「生き物としての良さ」と「色の綺麗さ」という組み合わせに心惹かれたんだと思います。すごく幸せな出会いでした。だから、何の迷いも心配もなく会社を辞め、花の世界に飛び込むことができたんです。

人より働くから、チャンスに恵まれた

最初は、知り合いに紹介してもらったドライフラワーのお店で働きました。そこは色んな意味で過酷な環境で(笑)。当時は、それが当たり前だと思っていましたけど、きつかったんですね……。ただ、どんなにつらくても、大好きな花の仕事だから頑張れました。それに、結果的には、そのお店ですごく鍛えられた部分もあるので、感謝の気持ちは持っています。
二年ほど働いて、そろそろ別のお店に移ろうかなと考えていたところで、大きな出会いがありました。その日は、あるお店の面接に行くことになっていたんですが、少し早く家を出たので、表参道にある私が好きな別の花屋にたまたま立ち寄ったんです。そしたら、そのお店に「スタッフ募集」という紙が。店員さんに声を掛けたら、「まず、履歴書を」と。それで、「私、今持ってます」って(笑)。そこが、ニコライ・バーグマンさんのお店でした。
入社してからは、「働きすぎじゃない?」と言われることもあったんですけど、前のお店の経験があったので、私にとってはそれくらいが当たり前で。人より働くから、チャンスにも恵まれましたし、やればやるほど技術も高くなりますから、どんどんやりましたね。

売上の数字も見ながら、いいものを作る

ニコライ・バーグマンさんのお店で三年ほど働いた後、家庭の事情でお店を辞めたんですけど、辞めてからも、私に花の仕事を頼みたいとおっしゃって下さるお客様が何人かいてくれたんです。自分がやって喜んでもらえるんだったら頑張ろうと思い、フリーランスとして少しずつ仕事を始めていきました。最初は本当に趣味程度だったんですけど、そこからどんどん広がっていって、スタッフが必要になり、場所が必要になり、法人化しないと取引できない企業もあったりしたので、今の会社を作ったという感じですね。会社ですから、お金のこととか色々と大変なこともあるんですけど、それでも、やれば仕事が付いてくると信じて、現在まで続けてこられています。
今、「デザイナーとしての自分」と「経営者としての自分」は、半々くらいだと思います。そのバランスはすごく難しいです。売上の数字も見ながら、いいものを作らないといけない。そのバランスをうまくとりながら舵を切っていくことが必要ですが、悩むことも多いですね。

「花屋がやらない仕事をやってください」という依頼

たとえば、雑貨屋さんのリニューアル店舗の装飾や、化粧品のパーティの装飾、マンションのエントランスの装飾、オブジェの制作などの仕事があります。最近では、商品企画も多いですね。花屋の立場で、香水屋さんと一緒に商品を作ったり。あとは、婚礼やレストランの生け込み、インターネットの販売なども。本当に、花にまつわることは何でもやりますし、全国どこにでも行きますよ。最近、面白かったのは、「花屋がやらない仕事をやってください」という依頼。他の花屋が絶対やらないようなオブジェを作ってくださいと。そのとき、「あ、もう私、花屋じゃないのかもしれない」って思いましたね(笑)。その仕事は今まさに進行中で、什器からデザインしたり、造花屋さんに花びら一枚から作ってもらうなど、色々工夫しています。

花の色合わせで伝えたいイメージを表現する

フラワーデザイナーには、花の形にこだわる人もいるし、花の種類にこだわる人もいると思うんですけど、私が一番こだわっているのは色です。私、色彩統計学の専門学校にも通っていたんです。色彩統計学というのは、たとえば、「日本人がこの色を見ると、何割の人がこういう感覚になる」といった学問で、携帯電話の色を決めたり、ファッションの色を決めたりといったことに使われたりします。私の場合は、花の色合わせで色彩統計学使って、表現したいイメージを作り上げているんです。色彩統計学を初めて知った時は、「また新しい扉が開いてしまった!」という感覚でしたね。それが今でも自分のベースになっています。
もう一つこだわっているのは、やっぱり私は依頼あってのデザイナーなので、お客様の意図をきちんと汲み取ったうえでデザインするということ。化粧品関係の仕事だったら、その化粧品のコンセプトから自分でしっかり理解して、それを花で表現する。だから、コンセプトがしっかり立って、こだわりのあるお店やブランドの方が仕事をしやすいんです。逆に、「何でもいいから」と言われると少し困ってしまいますね(笑)。

自分の「どうしたい」よりも、他人からの「どうしてほしい」

昔は、一フラワーデザイナーとしていいものが作れたら、それがゴールでした。でも、最近では、大勢で仕事をする機会が増えてきたので、色々な専門家と力を合わせて一つのものを作り上げていくときの達成感が、仕事をする喜びになってきました。自分一人ではできなかったものが、他の人の力を借りることによってできるようになっていく。年齢を重ねる中で、人から得ることの素晴らしさに目がいくようになったような気がします。
これまでも、一つ一つ目の前の仕事をやっていくなかで次が見えてきたので、自分としてこれからの目標みたいなものはあまり持っていないですね。私はやっぱり、自分の「どうしたい」よりも、他人からの「どうしてほしい」に応えることの方が、本質的に合っているみたいです。若い頃は、そうやって自分のなかに表現したいものがあまり無いことに悩んだ時期もあったんですけど、今はもう、それが無いことが自分のスタイルだなと思って。お客様の期待や要望に120%以上応えるんだ、という強い想いを胸に仕事と向き合っています。

株式会社フランテッセ(東京都中央区八丁堀3丁目17番16号セントラル京橋三立ビル別館903)
中居美和子さん

こんな話題でお悩みではありませんか?

キッチン・玄関は運気を左右する場所。風水で運気アップを!

清潔で明るいキッチンや玄関はそれだけで気持ちがいいものですが、風水を工夫すればさらに運気が...

炊飯器ひとつで本格リゾットが完成! カマンベールとベーコンのリゾット

炊飯器を開いて、お米の上にカマンベールチーズがまるごとドン!牛乳を加えてさっとまぜれば、と...

カーテンはフックをつけたまま洗えば、より手軽!

季節の変わり目にカーテンを洗いたいけれど、フックを取り外すのも面倒だし、干す場所がない……...

あなたの賃貸暮らしが豊かになるお話