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「お客様のその先にいる方々まで幸せになっていただきたい」合羽橋の料理道具のお店 飯田屋5代目社長 飯田敬子さん

様々な業界で活躍中の大人にインタビューする「大人の散歩道」。現在、第一線で仕事する大人はこれまでどんな生き方をしてきたのか。今も昔も変わらない大切なことを伺っていきます。 

今回は、合羽橋にある料理道具屋さん「飯田屋」の5代目社長飯田敬子さんのお話です。常時、約1万点もの豊富な料理道具が取り揃えられている「飯田屋」で社長14年目を迎えた敬子さん。魅力的な笑顔で、美味しい料理を作るための道具をお勧めしてくださいました。

株式会社飯田は、大正元年創業、今年104年目を迎えた料理道具屋です。扱う道具は時代に合わせて変わってきていまして、創業当時の建具屋から、ウインドケース屋、ホーローバット屋を経て、昭和30年代にお肉屋さんの料理道具専門店になりました。そこから、お惣菜関係の道具も揃えるようになり、昭和50年代には、メラミン食器という回転寿司用のお皿を日本で初めて取り扱い始めたんです。さらに、デパ地下などのお客様も増えていったことで、取り扱う商品が細分化していきました。また、そういった卸売に加えて、ここ5、6年で小売も増えています。一般の方が楽しくお料理できるような便利グッズ、カラフルな可愛らしい料理道具をお店に置くようになり、それをTVや雑誌で取り上げていただくようになりました。

ご先祖が大事に守ってきたものを引き継ぐ責任

二人姉妹の長女だったので、将来は「飯田」を継がなければいけないだろうな、と子どもの頃から漠然と思っていました。学生時代は、服飾デザイナーになりたいという夢もあって美術大学で勉強していましたが、ご先祖が大事に守ってきたものを引き継いで次にバトンタッチするという役目は自覚していました。それはとても責任のあることだと。
20代の初め頃に一社員として飯田に入社し、最初はお肉屋さんや飲食店の方が着る白衣や、店舗用の「のぼり」を担当しました。当時から、自分の担当する部門は自分の責任で発注して商品を管理する仕組みだったので、とてもやりがいを感じていたのを覚えています。仕入れを決めた商品が売れると嬉しかったですね。それに、エキスパートの先輩方がたくさんいらっしゃいましたから、仕事関係や人間関係のことでたくさん教えていただくことがありました。その方たちには、今でもとても感謝しています。

どん底まで落ちたとしても、必ず光が差してくる

3代目の社長だった私の父は、時代の流れにとても敏感で、取り扱う商品をそれに合わせて変えてきました。日本にでき始めたばかりのスーパーマーケット向けの冷凍ケースを取り扱い始めたのも、お肉屋さん専門の料理道具屋に変えたのも、回転寿司用のメラミン食器を仕入れ始めたのも父でした。
父はいつも、「どん底まで落ちて真っ暗な状況になったとしても、必ず光が差してくる。救いの手が現れるから何があっても困ることはないよ」と言っていました。人との出会いをすごく大事にしていた父らしい言葉だったと思います。その父が病気で亡くなって、専業主婦だった母が社長になり、私と二人三脚でやっていくことになったときも、その言葉を思い出して勇気をもらっていましたね。実際、これまで窮地に陥ったことも何回ありましたが、父の言葉通り、周りの方たちのおかげでそれを切り抜けることができたんです。

会社という生き物の命の根源は、そこで働く人たち

今、私は、父の死後8年間社長を勤め上げた母の跡を継いで、社長業14年目。ここまでやってこられたのは奇跡に近いような気がしています。それは、間違いなくスタッフや周りの方のおかげですね。
私はつくづく、会社というのは、呼吸をして血が流れている生身の人間と同じだと感じています。その命の根源は何かというと、そこで働く人。会社で働く方々の思いやエネルギーが作り出しているものの形こそが会社だと思います。トップが一人で作ったものではないんです。だから、一緒に働いてくれる良い方とのご縁が本当に大切だと思います。お客様が大事なのは当然ですけど、そのお客様に会社の看板を背負って最前線で接するのは社員ですから。そういう意味では、社長なんていうのは大した役ではないんですよね。

スタッフのエネルギーがお店にお客様を引き寄せる

時々、お客様と同じ視点でお店を外から見るんです。そうすると、おかしいかもしれませんが、飯田屋って他のお店とちょっと違うような気がするんです。雰囲気や商品の構成も違うでしょうし、POPの影響もあるかもしれませんけど、すごくエネルギーを感じる。お客様にも同じようなことをよく言っていただきます。それは、スタッフのみんなが、一生懸命POPを書いたり、商品を選んだり、並べたり、掃除をしたり、毎日色々頑張ってくれているからなんでしょうね。みんな私に、「仕事が楽しい」って言ってくれるんです。毎日、営業日報をノートに書いてくれて、それに私がお返事を書いてやりとりしています。仕事の悩みや苦労も。交換日記みたいなものですよね。彼ら彼女らのそういう思い、毎日本当に仕事に悩みながら、それでも、向上したい、成長したいという気持ち、それがきっとお店の隅々にまで染み込んでいるんですね。そういう思いがお客様を引き寄せてくださっているんだと思います。

道具を使いわけるとお料理するのがいっそう楽しくなる

今、お店で人気の道具は、「おろし金」です。他の道具と同様、一口に「おろし金」と言っても素材や目の流れの違いによって色々な種類があるんです。同じ大根をおろしても、味が変わるんですよ。「ふわふわ」「しゃりしゃり」「ふわしゃり」「しゃりふわ」と食感も全然違うんです。食べ比べるとびっくりするくらい。だから、焼き魚にはこのおろし金、ポン酢にはこっち、天ぷらにはこれといった風にお料理に合わせて使い分けすることをお勧めします。おろし金って、一家に一個あれば十分なイメージですが、奥が深い。実は料理道具って、すごく微妙なものなんです。一つのアイテムでも種類が多いですし、料理のでき具合も違ってくる。味の幅が広がりますし、調理時間を短縮できるものもあります。いい道具を使うと、料理するのが楽しくなるんですよね。

料理は大切な相手を思う“I love you”のメッセージ

何よりも大切なことって健康ですよね。その健康を作るのはお料理だと思うんです。最近、「食育が大事」って言われているように、食事は子供たちの体を作るものだし、愛情のこもったご飯、バランス良い食事が、子供の心も育てるものだと思います。私の息子が「料理って、相手を喜ばせるものだよね。“Iloveyou”のメッセージだよね」ってよく言うんです。相手のことを大事に思う気持ちが美味しい料理に変わる。だから、美味しい料理を作って、たくさんの方に“Iloveyou”を伝えてもらえるといいなと思います。家族や友達、恋人、そして、もちろん、自分自身に対しても。自分の健康を守るために、自分を大切にすることも大事なことですから。

“お客様”のその先にいる方々にまで幸せになっていただきたい。

だからこそ、自分たちには大きな責任があると思っています。大事な料理を作るための道具を販売させていただいているわけですから。飯田の名刺には、父が考えた言葉「積極的用器具の店」と書いてあります。これは、「“私たちのお客様”にとってのお客様、つまり、私たちの道具を使ってくださっている飲食店にお食事にいらっしゃるお客様、まで幸せにする料理道具を販売する」という父の願いが込められた言葉なんです。直接お代金をいただく飲食店だけでなく、その先まで。そこまで積極的に、という。自分の実現したい美味しい料理を作るために料理道具を探し求めていらっしゃるシェフの方々のご要望に答えることが私たちの使命だと思っています。そのシェフの方々が飯田屋の道具を使って美味しい料理を作り、それを食べたお客様がまた笑顔に、健康に、幸せになっていただきたい。そういうところまで私たちはご提供したい。もちろん飲食店に限らず、家庭で作るお料理でも同じです。それは、父のもっと前、創業の頃からずっと受け継がれている考え方だと思っています。

飯田屋(〒111-0035東京都台東区西浅草2-21-6)
飯田敬子さん

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